黙って一緒に堕ちてろよ
「…………は」
「そーゆー反応しちゃうんだ。へーぇ」
古茶くんが覗き込んでくる。奴に隙を与えてしまった自分を殴りたい。
「す、好きでもない奴にこんなことされて嬉しい奴なんていない!……変態じゃないんだから」
「うえー、辛辣。でもそうは見えないけど、った!」
気がついたらときには奴を殴っていた。顔を狙ったけれども奴の左手で防がれる。
「調子乗んな!」
「──よく考えたら力弱すぎてまったく痛くはなかったわ」
反射的に痛いって言っちゃうときあるよね〜。いけしゃあしゃあとそんなことを抜かす彼を置き去りにして、私は全速力でその場から逃げる。
息切れ、鼓動が早くなる。違う。これは走ったことによる生理的なものだから。取り乱したとかじゃない、絶対違う。
嫌なはずなのに、嫌じゃないとおかしいのに、……嫌じゃなかった、なんて。
死んでも言えない。
「私は変態だったのか……」
走り疲れて足を止める。紅潮する頬を両手で押さえ、呆然とする。知らなかった。ショックだ。
古茶くんが一緒にいると、なんでか知らないけれどもなにかがおかしい。古茶くんごときに振り回されて、ペースを崩されて。……古茶くんのせいだ。
むかつく。むかつく。あ゛ーもう。
むかつく!!!