黙って一緒に堕ちてろよ
──ドスッ。
「…………は?」
空き缶の音とは違う、にぶい音が響いた。足は無意識のうちに歩くことを中断している。
薄暗く、視界が悪い。目を凝らす。直後、後悔する。
ひとり、立っている、その足元に。もうひとりが倒れ込んで、小さなうめき声をあげていた。
え、なに。え、殴った?え?
混乱するのもやむなしだと思う。いくらこの辺が治安悪いって言ったって、こんな場面に出くわすのは初めてだ。
つまるところ、私はこの街の、日のあるうちの顔しか知らなかったってことらしい。冗談じゃない。
人通りの少ない道だから、まだ騒ぎにはなっていないみたいだけど。
よし。巻き込まれないうちにさっさと逃げよう。私はもと来た道を戻ろうと、回れ右のモーションをする。
──一瞬だけ、そちらを見てしまったのが間違いだった。
人影が、ゆらりと揺らめく。街灯に照らされ、その横顔があらわになり。
私は目を見開いた。
「………………え」
似合わない場所に、似つかわしくない格好で、
──なんでいるんだ、優等生。