黙って一緒に堕ちてろよ

──ドスッ。



「…………は?」



空き缶の音とは違う、にぶい音が響いた。足は無意識のうちに歩くことを中断している。


薄暗く、視界が悪い。目を凝らす。直後、後悔する。


ひとり、立っている、その足元に。もうひとりが倒れ込んで、小さなうめき声をあげていた。


え、なに。え、殴った?え?


混乱するのもやむなしだと思う。いくらこの辺が治安悪いって言ったって、こんな場面に出くわすのは初めてだ。


つまるところ、私はこの街の、日のあるうちの顔しか知らなかったってことらしい。冗談じゃない。


人通りの少ない道だから、まだ騒ぎにはなっていないみたいだけど。


よし。巻き込まれないうちにさっさと逃げよう。私はもと来た道を戻ろうと、回れ右のモーションをする。


──一瞬だけ、そちらを見てしまったのが間違いだった。


人影が、ゆらりと揺らめく。街灯に照らされ、その横顔があらわになり。


私は目を見開いた。





「………………え」





似合わない場所に、似つかわしくない格好で、



──なんでいるんだ、優等生。
< 11 / 156 >

この作品をシェア

pagetop