黙って一緒に堕ちてろよ

「えー、名字でなんて呼ばないで、前みたいに由奈って呼んでよ〜」


「……綾瀬がそう言うなら」


「って言ってまた名字だし〜。まぁいいや、ふたりでなに話してたの?由奈もまぜて!」


まぜて、なんて言ってるけど、私なんかには目もくれず。古茶くんに必死にアピールしている。


まるで私の存在を忘れているみたい。いや、最初から目には入ってないんだったね。人がいても気にせずいちゃいちゃいちゃいちゃ。……元カノかぁ。


別にいいけどね?私も古茶くんに特別用事があったわけでもないし、いいんだけどね?


「あっ、岩倉さん、さっき先生が呼んでたから早く行ったほうがいいんじゃない〜?」


古茶くんの腕にしがみつき、私に退散を促す綾瀬さん。


彼女から溢れ出るお前邪魔なんだよオーラ。先生が呼んでるとか絶対うそ。


だけど先手を打たれた以上、『優等生』の私はそれを無視することもできずに、


「……わかった。ありがとう」


にこり、と。作り笑いを浮かべた。


……つもりだったけれども、表情筋が凍りついてうまく笑えなかった。
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