黙って一緒に堕ちてろよ

綾瀬さんのうそのせいで、教室内は一瞬シーンと静まり返り、それから一気にざわざわと騒がしくなった。


あー、なるほど。私を悪者に仕立て上げる気ね。悲劇のヒロインぶって同情してもらおうってわけだ。


そういえば彼女は十分したたかだったわ。か弱くなんてなかったわ。


「由奈!大丈夫!?」


「ちょっと岩倉さん、いくらなんでもそれはないんじゃないの?由奈はなにもしてないのにひどいよ」


綾瀬さんのトモダチさん、もとい取り巻きさんふたりが、すぐさま綾瀬さんのもとに駆けつけて、両側を支えて彼女を立ち上がらせた。


そして、ふたりして彼女を擁護する。


え、じゃあこれ遠慮しなくてよくない?


正当防衛は許されるでしょ?そういう解釈でいいんでしょ。


「え、マジ?」


「やばー。女の嫉妬こわっ」


「岩倉さんってそんなことする人だったんだ……幻滅」


私は彼女の策略通り、うしろ指を指される。あちこちから視線を感じる。教室の真ん中にぽつんとひとり立たされた私は、まるではりつけに立たされて断罪を待っている罪人みたい。


あーあー、みんな好き勝手言ってくれちゃって。


ほら。あれだけ完璧に『優等生』を演じてきても、一瞬で壊れちゃうんだからさ。


それならせめて、壊すのは自分で思いきり。


他人に譲ってなんてやらないよ。
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