黙って一緒に堕ちてろよ

「ひえっ」


表情までは見えなかった。でも絶対不機嫌。ていうか、関わったら面倒なことになりそうだから極力関わりたくない。


ひょろひょろに細くても、一応男なわけで。男対女。暴力沙汰じゃ勝ち目はない。私はこれでもか弱い乙女だと自負しているもので。


平和的解決に持ち込むには無理がある?いやでも、物は試し。当たって砕けろ。いや、やっぱり砕けはするな。


「こ、こんばんは……偶然だね。なにしてるの?」


いつも、教室で接しているように。優等生モードで穏やかを装って話しかける。


私は貴方の敵じゃないよ、だから仲良くしよう、と、まるで威嚇する犬に語りかけているような気分。害意はない、はうそだけど。


しかし、それに対する返答はなく。代わりに、影がぬらりと動く。



──交渉決裂!!



これ以上平和的解決を訴えるのは無理だと瞬間的に悟って、私は今度こそ回れ右してスタートダッシュを切った。


同時に、影が私を追いかけてくるのを目のはしでとらえていた。


「やっぱそうなるよねぇ……!」


いくら私が優等生でも、弱点くらいある。唯一の苦手科目は体育だ。自慢じゃないけど、持久力はからっきし。


別に勉強しかしてないから、とかいう理由ではないけれども……。なんにせよ、分が悪い!
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