黙って一緒に堕ちてろよ
「古茶くん可哀想」
「よくやるよな、完璧騙されてたわー」
クラスメートは部外者のくせに、清々しいほど手のひら返しで笑っちゃう。そういう奴らがいちばん嫌い。でも、だからといって綾瀬さんに助け舟を出す義理なんてないし、そこまで私はお人好しでもない。
……たとえば、心優しい、少女漫画のヒロインだったら。敵だって、その広い心で救ってあげたんだろうけれど。
「〜〜っ!」
白い目に耐えきれなくなったらしい彼女は、古茶くんのスマホをひったくろうとしたのか、シュッと手を出した。
「おっと」
淡いピンクのネイルが施された、長く尖った爪が古茶くんの頬をかすめる。
今さらスマホを奪ったって無駄なのに。そんなことにも気がつかないくらい慌ててるんだろうな。ああ、やっぱり、人が堕ちていく様はいつ見ても面白い。
古茶くんは、頬にできた傷を指さして、
「あーあ、キズモノになっちゃった」
どう責任とってくれんの?からからと笑う姿は、どこまでも悪魔的なものだった。