黙って一緒に堕ちてろよ

確かサッカー部だっけ?ミーハーな女子たちがうわさしているのを小耳に挟んだことがある。


私が帰宅途中に校門前を通るとき、よく外周を走っているサッカー部に出くわすな、と思い出した。毎日走り込みしてる相手に勝てるはずがない。


──パシッ。


「つーかまーえた」


「ひっ」


ひやり、手をつかまれる感触に、からだが凍りつく。私は短い悲鳴をあげた。冗談抜きに心臓に悪い。


「逃げるなんてひどいなー?俺は岩倉さんと仲良くしたいだけなのに。昼間も言ったでしょ、ね?ナカヨクしよう?」


彼──古茶蒼唯は、柔和な笑みを浮かべていた。そこだけ切り取ったら、まるでいつもの『優等生』みたい。


背景とミスマッチで余計に不気味さが増している。


「誰がお前みたいなヤンキーと……いたたたっ!」


古茶くんがキリキリと私の腕を捻りあげる。爪が食い込んで痛い痛い痛い痛い!


「ん?なんか言った?ごめんね、車の音がうるさくて聞こえなかったからもう一回言ってもらってもいいかな。誰が、なんだって?」


「絶対聞こえてたじゃん……」


男子にも女子にも分け隔てなく優しい人気者、その面影が今や1ミリもなく。女子にも容赦ないタイプなのか、普段とは大違い。


いや、普段が猫かぶってたのか。本性はやっぱりこっちなのか。
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