黙って一緒に堕ちてろよ

屋上に出てみたかったな、と思った。でも、屋上の鍵を拝借するのも面倒だったし、鍵を壊すのも面倒だ。……壊す、なんて優等生の思考じゃないな。自分で思っていて、ナチュラルに出てきたそれに小さく笑った。


「ほんとむちゃくちゃだよな。あのとき俺が付き合ってないって言ってたらどーするつもりだったんだよ」


「そのときは大人しく古茶くんのスキャンダル写真ばらまくつもりだったよ」


「文脈がまずおかしいんだよ。大人しくばらまくってなんだよ大人しくねぇよそれは。勇ましいよ」


思えば、私が素を出したのは古茶くんがはじめてかもしれない。


古茶くんの前では、肩の力を抜けた。古茶くんがどうかは知らないけれど、私は。……この場所を心地いいとまで感じるようになってしまった。


おかしいな、こんなはずじゃなかったのに。

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