黙って一緒に堕ちてろよ
こんなやりとりも、あの日がなかったら成立していない。そう考えると、ここにこうしてふたりでいることは、偶然が重なり合った結果、ということで。
「……今から言うことはひとりごとだから聞き流してね」
ぽすん、と、頭を古茶くんの肩に預ける。古茶くんが、ん、とうなずいたのを確認してから、私は、ぽつり、ぽつりと喋り出す。
私の母親がさ。俗にいう、ヘビースモーカーだったんだよね。
父親はそんな母親に愛想尽かして、私が小さい頃に出て行ったらしい。まぁよくある話だよ。それから、母親はどんどんすさんでいって、私に当たることも多くなった。
そんな母親を間近で見てるとさ、幼いながらに気づくんだよね。私はこの人には頼れないんだって。どうしようもない人間もいるんだなって。
母親が夜遅くに酒を飲んで帰ってきた日があった。酔ってたのか知らないけど、……いや、酔ってたって思い込んでいたかった、が正しいかな。火のついたたばこを私の腕に押し当てて。私は抵抗もせずにそれを呆然と見てたよ。
私の腕には、まるで消えない烙印みたいに、今でも根性焼きのあとが残ってる。
それで、母親のためでもなく、自分のために、私がしっかりしないと。自分を守れるのは自分しかいないんだって……その頃からかな。そう思うようになって。
でも、そうやって無理やり真面目を装ってても、やっぱりねじれるんだよね。見ての通りのひねくれた性格になっちゃってさ。ほんと人生無理ゲーすぎて無理だよ。