黙って一緒に堕ちてろよ

「俺さ、ずっと岩倉さんと仲良くなりたいって思ってたんだよね」


それは、以前聞いたことのあるセリフだった。


「それがなに!?」


今は古茶くんからスマホを奪うことで忙しい。若干キレ気味にそう返すと。


「あのとき言ったこと、ほんとだよ」


古茶くんは、まだ私が古茶くんの本性を知らないときに、気でも狂ったのかと思ったそのセリフを、穏やかな顔つきで肯定した。


今では、穏やかな表情ほど彼に似合わないものはないな、と思う。


「うそだ」


「ほんとだって」


私たちは取っ組み合いながら、論争を繰り広げる。


「だって、なんであの頃の古茶くんが、私と仲良くなりたいなんて思うのさ。今思うのもおかしいよ、本性知ったあとじゃ、なおさらそんなこと思うはずないもん」


「全否定するじゃん。まぁ確かにそうなんだけどさ」


古茶くんは私が全否定したって言うけれど、私が言ったことを肯定した古茶くんも大概だ。
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