黙って一緒に堕ちてろよ
「ここで私が、キャー、助けてー、って言ったみたら。どうなっちゃうかな、試してみる?」
精一杯の裏声が思ったよりも気持ち悪かったので背筋がぞわぞわした。
つくづく、オンナノコって柄じゃないな。自分には無理だ、自覚なんてとっくの昔にしていた。
「……まさかあの真面目ちゃんがこんな性格してたなんてねー。脅せばすぐに引き下がると思ったのに」
「は、ざまぁ。相手が悪かったって思って大人しく諦めるのがいいよ」
無駄な争いと勝ち目のない賭けはしない主義なので。と、そこまで思って、気がついてしまった。
──あれ?これ、もしかして、勝ち戦じゃない?
「……ねぇ」
「あ゛?」
「むしろ脅せる立場にあるのって私じゃない?」
だって、弱み握ってんの私だし。今の状況だと、どう見たって私のほうが優勢。
面白そうなネタ見つけたら飽きるまで食い潰したいじゃん?そういうもんじゃん?
私の言葉に、彼はぴくりと反応する。
聡い彼のことだ。私がこれ以上なにかを言わなくても、その一言だけで意味が伝わったのだろう。眉をひそめて、当てつけがましくため息をついた。
「……いい度胸してんな、お前」
「お褒めの言葉どーも」