黙って一緒に堕ちてろよ

「ほんと?助かるー」


そう言った彼女は、笑顔だった。


幸せいっぱいの笑顔、というふうではなく。面倒ごとがなくなった、ラッキー、みたいな。思っていることが丸見えのあけすけな笑顔に、嫌悪感を覚える。


彼女は自分の用件が済むと、そそくさとトモダチさんのところへと戻っていった。


「代わってくれた?」


「もち、ばっちり!」


「んじゃ早く行こ!最初はカラオケね!」


聞こえてんだよ。声がデカすぎて丸聞こえの会話にため息をつきたくなる。


キャンキャン吠えてうるせえの。ばっちり、とか。なんだそれ。何様?


その態度にいらつきはするけれど、感情に任せて怒りを表に出すようなことはしない。そんな猿みたいな真似はしない。……クソが。


心の中で悪態づいても心が晴れるわけでもなく。どす黒いもやが私を内側から煤色に染色していく。いや、たぶん。それは最初から黒かった。


ひとしきり心の中で吐き出したあと、すぅ、と冷たい空気を吸って、ゆっくりと吐く。そして、天井を仰ぎ、思うのだ。


──無駄なエネルギー使った。もったいなかったなぁ。
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