黙って一緒に堕ちてろよ
「つか結局いるなら手分けしたほうが早いじゃん……なんで俺が……」
ぶちぶち文句を垂れつつも、古茶くんはさっさと手を動かしている。乗り気じゃないわりには手際がいい。
「思ったんだけど、古茶くんってさぁ。根は真面目なタイプなの?」
気がついたらそんな質問をしていた。
だって、この前知った本当の彼は、とてもそんなふうには思えなかったから。かと思うと、いつの間にか、元通りの彼に戻っているものだから。
ねぇ、あのさ。どれが本当の古茶くんなのさ。のどまで出かかったけれど、空気に乗せるのはやめた。愚問だと思った。
「別に。早く終わらせて帰りたいだけ」
「やっぱ真面目じゃん。私なんて頼まれてもやらないし、断るのも面倒だからやったふりして帰ってるわ」
「は?それ、俺に押しつけた意味なくね?帰っていい?」
ごもっとも。
ドがつくほどの正論だけれども、ここで帰られちゃつまらない。
私は「よっ」とロッカーから降りて、教室の扉に寄りかかる。
「帰らせないよ。わざわざこうやってふたりきりの時間つくったんだから、無駄にさせないでよ」
ほら、古茶くんって人気者みたいだし?こうでもしないと時間取れないでしょ、ね。柔らかに微笑んでそう続ければ、古茶くんは苦い顔をした。