黙って一緒に堕ちてろよ

いつまでも宙ぶらりんじゃ話にならない。私は両手をだらんと上げ、降参を示した。


「あー。よしわかった、一旦落ち着こう。ここでケンカするのは建設的じゃない。それに、別に私は古茶くんと争いたいわけじゃない」


「ハッ。どの口が」


「……私が譲歩してやってんのに、少しは歩み寄ろうっていう姿勢はないわけ?」


せっかく私が穏便に話を済ませようとしたのに、奴が喧嘩腰だから思わずカッとなって突っかかる。


彼はため息をひとつついて、パッと手を離す。


ようやく解放された私は、思い出したように咳き込んだ。


冷たい酸素が肺を刺激して、ぞくぞくする。二度とごめんだわ。


「あと女の子はもっと丁寧に扱うべきだと私は思うんだけど」


そうつけたすと、「オンナノコ?どこに?」と鼻で笑いやがったのでこいつは一生許さねえと心に決めた。


「で?古茶くん、あの日なにしてたの?気でも狂ってたの?それともアレがデフォなの?」


「別に大層な理由なんてないよ。強いて言うなら……。……。……むしゃくしゃしてた」


「なにその殺人犯みたいな言い分」


そんな理由で殺されてはたまったもんじゃない。いや、殺されはしなかったんだっけ?そういえば、あの哀れな被害者のその後を私は知らない。


まぁぶっちゃけ、見ず知らずの奴がどうなっていようが、私の知ったこっちゃない。
< 26 / 156 >

この作品をシェア

pagetop