黙って一緒に堕ちてろよ
古茶蒼唯。
サラサラの黒髪。紺色のベストに長袖のワイシャツ。女子受けしそうな細身の体型に、精巧なつくりをした顔面。
このクラスの『優等生』と聞かれて、私以外を答えるバカは、恐らく十中八九が彼の名前を口にするんだろうな。癪だけど。
明るくとっつきやすい性格と輝かんばかりの顔面で一躍人気者。
今ではクラスの中心的存在で、彼の周りには人が絶えず、いつも誰かと一緒に笑っている印象。
……うまくやってるよなぁ、と思う。
女子にモテると男子からはひんしゅくを買いそうなのに、持ち前のコミュ力でうまくかわしている。
女子たちはキャーキャー騒いでいるけれど、私はいまいちピンと来ない。どころか、私は彼のことが、
「岩倉さん」
「──ぇ、」
一瞬、フリーズ。ワンテンポ遅れて、視界がクリアになる。
いや、仕方ないと思う。意識の奥底に潜り込んでいるときに声が降ってきたら、誰だってそうなる。私は悪くない……。
「……なに?」
私はとっさに作り笑顔を浮かべて、取り繕う。笑顔が染みついているおかげで不自然ではなかったと思うけれど。気づかれてない、よね。
くっそ、油断してたなぁ。だってさっきまで別のところで別の話してたじゃん。まさか来るとか思わないじゃん。背後を取られたみたいでむかつくなぁ、って。ぼんやりと、思うだけ。
敵意は口には出さないのがお利口さんってもんだ。