黙って一緒に堕ちてろよ
古茶くんが、絆創膏を貼るために前かがみになる。
つむじが見えた。あ、と思う。
いつもは見えないのに。私よりも背ぇ高いもんなって、改めて思わされた。
「えい」
「った!」
私は、本能に従って、古茶くんのつむじを押した。
不意打ちの攻撃をくらった彼は、頭を両手で押さえ、はてなマークを浮かばせている。
「え、なに、なぜに手刀……?」
「んー、なんとなく?」
「なにその理不尽。しばくぞ」
なぜかと聞かれたら、そこにつむじがあったから、の一択なんだけど。
「……ありがと」
不意にこぼれ落ちたその言葉。
言ってしまってから、しまった、これだとさっきまでの流れが照れ隠しみたいになったかな、しくじったな、なんて、柄にもなく頭が痛くなった。
それから、妙な間があって。
「……ん」
古茶くんは、目を瞑ってうなずいた。てっきりからかわれるかと思ったのに、そういうことは一切言わなかった。
古茶くんの手によって貼られた絆創膏。なでてみると、そこにはわずかにぬくもりがあった気がした。