黙って一緒に堕ちてろよ
「…………遅い」
「第一声がそれかよ、可愛げねぇ」
危機一髪じゃん、俺ってナイスタイミングじゃね?彼は調子のいいことを言って笑うけれど、本当にその通りなので言い返せずにグッと黙る。
「こ、古茶くん。違うの、これは……!」
私をリンチにした彼女たちは、彼を見るなり慌てて私を放し、弁明しようとする。
古茶くんは、顔を真っ青にした彼女たちに向かってニコリと微笑む。その顔に彼女たちが安堵するのも束の間。
「お前らってほんと可哀想な性格だよな」
笑みをはりつけたまま、そんなことを言うものだから。
場の空気は凍りつき、古茶くんは棒立ち状態の私の手を引いて、すたすたとその場をあとにする。
「なんで来たの」
「優等生としてはさ?見逃すわけにはいかないからねー」
「……なんで、わかったの」
「いつも授業五分前には着席してる生真面目な『優等生』が、五分前切っても教室にいなかったら。ちょっと気になるよね、誰だって」
……そんな理由で、わざわざ探したのか。
本当、甘っちょろいんだよ、ヤンキーのくせに。古茶くんのくせに。
別に、嫌とは言ってないけど。