黙って一緒に堕ちてろよ

休日だからか、普段よりも人が多い。人混みは苦手なんだよな、と息をつく。


見渡す限り、人、人、人……。友だち同士だったり、子連れだったり、その形はさまざま。


あとは、ちらほら見かけるのは、男女のふたり組、とか。


「…………」


異性同士が一緒にいるのをカップルだと断定するのは、いささか早計なのでは、と思う。


だって、ほら、今日だって。私と古茶くんはふたりだけど、カップルなんて関係じゃないし……。


「──岩倉さん?」


「っ、!」


考えごとをしている最中に声をかけられて驚くのは、ごく普通の反応……だと思うけれども。ちょうど彼のことを考えていたから、過剰反応してしまった気もしなくもない。


なにか言われないかビクビクしたけれど、「お待たせ」と手を振る古茶くんを見る限り、気づかれてないっぽい。あっぶな。


心臓に悪いよ。止まるかと思った。
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