黙って一緒に堕ちてろよ

動揺を隠すように、んんっ、と古茶くんが咳払いをする。それ、動揺してますって言ってるようなものじゃないかって思うんだけど。


「……眼鏡ないだけでも結構印象変わるんだ、へーぇ。そっちのほうが俺好み」


「……はっ!?聞いてねぇよバカ!」


いきなりなにを言い出すんだこいつは!


まだ寝ぼけているようなので、一発蹴りを入れてやる。照れ隠しとかでは断じてない、断じて!


「つくづく可愛くねぇ……」


私が蹴ったところをさすりながら、古茶くんがそうぼやく。


可愛さなんて求めてないから可愛くなくて結構だ!


憤慨する私をよそに、古茶くんが「でも」と、私の髪を指さした。


「バレるリスクとか、まさか岩倉さんが考えてないわけがないよね。それ、なんでそうしたの?」


古茶くんのその疑問は、優等生の岩倉さん、が前提にあるよな、と思った。


だから私は目を伏せて、


「……ちょっとした反抗心、だよ」


小さな声で、そう答えた。言うつもりはなかったので、聞こえていなくても別にいい。



その後、奪われた眼鏡を古茶くんがかけ、「どう?似合う?」と、音が鳴りそうなウィンクつきで聞いてきたのに対して、「わーすごい、優等生アイテムのはずがチャラ男の伊達メにしか見えなくなった」と棒読みで返したのはまた別の話。
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