黙って一緒に堕ちてろよ
のらりくらりとふたり旅。同級生にばったり会いでもしたらヤバいな、絶対質問攻めされる。古茶くんと岩倉さんが、なんでふたりでいるの!?って。古茶くん有名人だから。
本来なら、私と関わりなんかなかったはずのカーストの人間だもんなぁ。『あの日』がなかったら、私はきっと、古茶くんのことが嫌いなままだった。……今は?
並んで歩いているところを誰かに目撃されたらスキャンダル間違いなしなので、私は古茶くんの少しうしろを歩く。ふと、路地裏に差しかかった。あの日とは違う場所だったけれど。……あの日と重なって。
「…………ねぇ」
「のわっ!?」
くいっ、と、古茶くんのパーカーのすそをつまむ。古茶くんはそれに引っ張られ、思いきりつんのめる。
「おっま、なんのつもり──っ」
古茶くんが勢いよく振り向く。と同時に、私はスッと距離を詰め、……古茶くんの首元をかぐ。
「っ、なに、え……変態?」
「んや……たばこ吸ってそうだなって」
「えっ、吸わねーよ……岩倉さんの中の俺のイメージってそんななん?傷つく」
「そこまでアホではないって思ってるけど……ん、ヤニくさくはないね。代わりに、香水?の匂いする。チャラい」
「人の匂いかいどいてケチつけないでくれます?」
まぁ、仮にたばこなんか吸ってたとしたら、私がそれに気がつかないはずがないんだけど。
「……よかった。これ以上嫌いにならずに済むね」
つい、確認したくなったんだ。……たばこを吸っている人にはいい思い出がないから。