黙って一緒に堕ちてろよ
「でもあんな地味なガリ勉女よりも由奈のほうが可愛いよ〜!」
大きな声がしたので、私も古茶くんも一時休戦。そっちに耳を傾けた。
「楽勝だって〜。勝ち確勝ち確」
「え〜、そんなこと言ったら岩倉さんに悪いよ〜」
トモダチさんふたりに持ち上げられ、口では謙遜しているふうだけれども、『由奈』と呼ばれた女子はご満悦そう。
由奈、ゆな……その名前に私は聞き覚えがあった。
そうだ。クラスメートの綾瀬由奈だ。整った容姿とあざとい性格で、モテモテのクラスのマドンナ。さっきは焦っていて顔まで認識する余裕がなかったけれど。
「由奈ってば優しい」
「でももったいないよね、こんな可愛い由奈のこと振るなんて。きっと今頃後悔してるよ」
……なんか、トモダチさん、ってよりも、取り巻きさんのほうが正しそう。ご機嫌を取るために必死。他人に寄生して生きるのってなにが楽しいんだろうって思う。
「振ったの?振られたの間違いじゃなくて?」
同じくこの会話を聞いていたであろう隣の古茶くんに視線をやれば、
「なんで俺が振られるんだよ、お前実はなんも聞いてなかっただろ。ぶん殴んぞ」
げんこつが降ってきた。痛い。