黙って一緒に堕ちてろよ

◆︎


「はあ──っ」


思いきり吐き出した白い息は、やがて空気にとけて。何事もなかったかのように消え去った。


私がこうやって生きているのは呼吸という生理現象のせいなのに、吐いた息は跡形もなく消えるだなんて無責任な。……羨ましい。


図書室に寄っていたらすっかり遅くなってしまった。勉強するふりして漫画読んでたんだけど周りの人にはまったく気づかれなかった。


とにかく現実逃避していたかった。なにかに夢中になっていたかった。たぶん、なんでもよかった。


家に帰りたくないな。寄り道してこっかな。憂鬱を抱えて帰路を行く。


「……うえっ。たばこくさ」


路地裏を通りかかったときに、たばこを吸っている連中が見えた。けむい。最悪。最っ悪。
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