黙って一緒に堕ちてろよ
◆︎
「おいなんであの女を寄越した。嫌がらせか」
「クレームなら本人にお願いしまーす」
古茶くんがものすごい形相で迫ってくるから一体何事かと思ったら。
私は頼まれたから譲ってやっただけだ。非難されるいわれは微塵もない。
「どうせ私が行ったって古茶くんに押しつけるだけだったし。ひとりよりもふたりのほうがよかったでしょ?」
「相手があいつなら俺ひとりのほうがよかったわ。あいつ、ペラペラペラペラ喋ってばっかで手ぇまったく動かさねぇし、たまに仕事したと思ったら全部ぐちゃぐちゃでやり直し。手間が増えるだけだった」
古茶くんは、息継ぎもせずにそこまで言い切り、深く息を吸ったあと、最悪だ、と喘いだ。
「あいつ、岩倉さんに仕事押しつけられちゃって……とかしおらしく言ってたけど」
「あー。言いそう」
被害者ヅラしたら、善良な人間は味方になってくれるもんね。彼女は自分の顔の使い方をよくわかってるよ。
姑息な手段。いかにもだ。
「安心してよ。私が仕事押しつけるとしたら古茶くんだけだからさ」
「それのどこに安心する要素が?」