黙って一緒に堕ちてろよ
古茶くんは表向きは『善良な人間』に見えても、実はそうじゃないもんね。だからたぶん、綾瀬さんの攻撃は効かない。古茶くんじゃなければそれは効果抜群だったんだろうけれど。相手が悪かった。残念賞だよ。
「あー、くっそめんどい」
「めんどくさいのは私も同じだし、むしろ私は古茶くんのせいで迷惑こうむってんですけど」
早よ解決しろ。ていうか私を巻き込むな。
じとー、と睨んで責めると、彼は顔をしかめた。
「そんなこと言われてもさぁ。俺にどうしろと」
「私が知るか。さっさと振っちゃえば?」
「告白すらされてないのに振るとか、俺痛い勘違い野郎じゃん」
「どうせ綾瀬さんの気持ちなんかバレバレでしょ」
「そう……なんだけどねー」
彼にしては珍しく歯切れの悪い返事に、疑問を覚える。……嫌な予感がした。
「──まだ好きとか?」
気がついたら、そう口走っていた。
ハッとして口を押さえるけれど、言ってしまったものはもうどうしようもない。
古茶くんは、目を丸くして、それから、
「…………まさか」
そう、嗤った。その瞳に影が落ちた。