君が呼ぶから帰ってきたよ
もしかして…


見間違えるはずない。


私のそばにずっといてくれた人。


私が人生で最初で最後に好きになった人。


私は急いでその人の元へ向かう。


走って、走って、走った。


不思議なもので死んでいるのに心臓がバクバクした。


そして、浜辺に着いて私はブレザーの後ろ姿に声をかけた。


「康太!」


その後ろ姿は動かない。


ずっと海を見つめている。


声なんて届かない、当たり前だ。


私は死んでいるんだから…


でも、それでも何か君の為にしたいんだ。


私のことで…私の死に心を痛めている君に何かをしたいんだよ…


私は力の限り思いっきり叫んだ。


「こうたぁぁぁ!!」


すると、何故か君は私の方を振り返った。


え?聞こえないはずだよね…


君は私をじっと見つめて、震える声で言った。


「み、、は、る?」


「え、康太、私が見えるの?」


「見える。美春がいる…」


康太は驚きを隠せないようだった。


それと同じく、私も驚きを隠せない。


どうして、康太には見えるの?


「美春…会いたかった…」


康太は下を向き絞り出すような声で言った。


そのあと泣いていると気づいたのは康太足元の砂浜の色が変わっていたから。


その姿を見て、私も泣きそうになった。


「康太。」


私の声に涙がいっぱいになった目でこちらを見る康太。
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