君が呼ぶから帰ってきたよ
残っていたんだ。


私がいた事を残してくれていた人がいた。


真穂は私がいた事を残してくれていた。


私、ここにいたんだ。


ここに生きていたんだ…


私はゆっくり真穂の方へ歩いていった。


ざわざわした教室の中、私はまっすぐ真穂の方へ向かう。


そして真穂の前に立った。


真穂はそんな私の事をずっと見ている。


「真穂…」


「美春、変わらないね。」


そう言って真穂は笑う。


「真穂、ありがとう。私の事覚えててくれてありがとう…」


声が少しだけ震える。


「忘れるわけ、ないじゃん。大切な友達なんだから。」


"大切な友達"


その言葉にまた目の奥から涙が溢れる。


こんなに泣いたのはいつぶりだろう。


生きている時は、病気や治療の辛さで泣いてた気がする。


悲しさ、辛さ、悔しさ、虚しさ…


負の感情だけの涙。


だけど、これは違う。


嬉しいという感情の涙。


幸せな涙だと分かる。
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