君が呼ぶから帰ってきたよ
嬉しさに浸っていると、玄関がガチャって音がして開いた。


出てきたのはお母さんだ。


お母さんはこちらは見ず、私に背を向け鍵を閉めている。


えぇ、お母さん!?


私を見たらびっくりするんじゃないの!?


この状況をなんて説明しようかと考えていると、お母さんはこちらをちらっと見る。


やばい!と思って焦るがその気持ちは直ぐに無駄だと気づく。


お母さんは私を見ても何も表情を変えなかった。


それだけじゃない、私を通り抜けてしまったのだ。


見えてないんだ…


私、本当に死んだんだ。


一気に自分が死んだという事実を実感した。


分かっていても見えてないって感じるとしんどいものだな…


とりあえず家に入ろう。


…これ、鍵なくても通り抜けることできるのかな?


恐る恐る玄関のドアに手を伸ばすとすうっと通り抜けてしまった。


え、すごい。


なんか、映画みたいだ。


少し感心して私は玄関を通り抜けて家に入った。
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