君が呼ぶから帰ってきたよ
「真穂〜康太が絶対納得しないよ…」


だって現に今にも噛みつきそうな勢いでこっちを見てる!


必死に訴えかけると真穂はこっちを見て私にしか聞こえない小さな声で言った。


「美春、これしか方法がないの。それに体育祭実行委員をする人は応援団やるんだよ。康太のかっこいい姿見たくないの?」


…ずるい。


みたいに決まってる。


真穂は前、康太は美春のことが大事だと言った。


それなら…


不機嫌な康太に私は静かに近づいた。


「ねぇ、康太。実行委員をやってくれないかな?」


「はぁ?なんでだよ!」


康太は周りに気づかれないよう、真穂を見たまま私の声に返事をした。


「康太の応援団姿が見たいの。私、康太の活躍する姿みたい。死ぬ前は高校の体育祭見れてないし…」


康太は私の顔をちらっと見る。


ごめんね、康太。


言い方ずるいけど、許してね。


「わかったよ。やるよ実行委員。」


康太はクラスのみんなに聞こえる声で言った。


「いいのか?佐々木。」


「いいですけどあと一人誰がやるんですか?2人ですよね?」


康太はムスッとした顔で先生に聞く。


康太…結局私のお願いは聞いてくれるんだよね。


優しいね、ありがとう康太。


「あと一人は…」


先生がクラスの全体を見回した。


みんな顔を下げ、実行委員にされないようにしているようだった。


すると、すっとまっすぐ手が上がった。


日焼けた小麦色の手が。


「俺やります!康太と実行委員!」
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