君が呼ぶから帰ってきたよ
バツを指でおさえながら数える。


「1、2ー…20日くらいか…」


もう20日も過ぎたのかぁ…


この20日の間にどれだけのことがあったのだろう。


よく分からないけど、お葬式もあったはずだ。


カレンダーで1箇所だけ震えながら書いたであろう弱々しいバツがあった。


私はそれをゆっくりとなぞる。


私の死んだ日だ。


「お母さん、泣きながら書いたんだろうな」


そういえば、さっき見たお母さんは痩せてた気がする。


ご飯はちゃんと食べているだろうか?


ちゃんと笑えているんだろうか?


私がいなくなってどれだけ泣いたんだろうか?


いつも入院中、そばにいてくれた。


仕事もあったのに毎日病院に来て、"大丈夫"だと言ってくれた。


それは、"君"も一緒だったね。


私は自分の部屋に向かった。


「お母さん掃除してくれてるんだなぁ、綺麗だー」


本棚の前に立って写真立てを眺める。


そこには高校の制服姿の私と…隣に住む幼なじみである君、佐々木康太(ささきこうた)が写っていた。


「康太、元気かな。」


写真の中は笑顔の康太。


でも、ずっと私のことを泣きながら呼んでいた。


康太は、サッカー部で優しくてみんなから頼りにされる存在だった。


女の子からの人気凄くて、密かにファンクラブがあるとかないとか、そんな話まで出たくらいだ。


そんなモテる康太だったけど、私への接し方はずっと変わらない。
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