ハッピーエンダー
壊れた関係







五年前の夢を見ていた。目を覚ますと、月曜日の朝だった。

水樹さんは名ばかりの御曹司で、気まぐれに出勤し早くに帰ってくるお飾りの勤務をしているらしく、起きてこずに私だけ準備をして通勤電車に乗った。

いつもと違う電車に揺られながら、昨日のエレベーターでのキスを思い出しては唇に触れる。水樹さんとの二度目のキスだった。彼は私を慰めるとき、粘膜にキスをする。キスした後で「俺に惚れてるの?」と聞かれたが、私は首を横に振って、「その質問は二度としないでください」と告げた。そのまま、予定通りに買い物と朝食を済ませ、マンションへ戻ったんだっけ。水樹さんは終始なにか言いたげだったが、無視をした。


* * *


「おはようございます」

人のまばらなオフィス。営業部や総務部がある別棟は改築されてピカピカなのに、空中廊下で繋がっているこちらの事務センターは壁が黄ばみ、扉もすべて手動だ。

作業をする多くがパートタイマーや契約社員で、社内便で来る書類や電子メールで送られてくるファイルを各々のデスクで処理するだけ。あの狭いアパートのような、鬱蒼とした雰囲気が常に漂っている。
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