ハッピーエンダー
「ヒッ……」
母親は女みたいな声を出し、耳を塞ぎ、俺を見上げた。こっちを蹴ってもよかったが、ほとんど衝動的だった俺の深層心理は母親を蹴れないらしい。高校生になったときくらいから、この人のことが弱いと感じるようになった。昔は怖くて認められたくて必死だったのに、今はいつでもやり返せる。
「水樹ぃ……やめてよぉ……」
その代わり、涙を溜めて懇願されることが増え、それには抗えなくなった。抱きつかれ、頭を擦りつけられ、グシャグシャの顔を抱きしめろと要求される。俺をホスト代わりにしているのかと反吐が出たが、どうやら少し違う。
「なら気色悪いこと二度と言うな」
言い放つと、俺の胸の中から顔をあげた母親は、般若のようになっていた。
「テメェふざけんじゃねーぞ! アタシの息子なら言うこと聞けよ! 金が必要なんだよ!」