ハッピーエンダー

なにかをきっかけに化け物に変わる瞬間があるらしく、そのときに全力でこられると俺は床に倒され、馬乗りになられる。汚ねぇ体を俺に当てるなと思いながら、俺の上で野獣みたいに発狂して髪を振り乱す母親はもう止められないため、ぼんやりと眺めていた。

「テメェのせいでアタシの人生おしまいなんだよ! テメェがデキなきゃ一条に捨てられなかったんだ! 金持ってこねぇなら出ていけよ! テメェの顔なんか見たくねぇんだ! 死ね! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!」

胸ぐらを揺らすだけの暴力を受け流し、なおも俺が黙っていると、悲鳴は泣き声に変わっていく。

「……水樹ぃ……」

パタンと俺の胸に頭が落ちてくる。ようやく終わった。体を起こし、Tシャツを伸ばした。

「ルイくんと出掛けんだろ。準備したら」

「……フフフフ、うん。準備する」

ルイくんは便利だ。この人の世話を俺と分担してくれる。あっちもそう思っているらしく、小遣いもくれる。趣味の悪いブランド物の服を体にぶら下げた、頭の弱いクソ野郎。
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