ハッピーエンダー
「うん。帰る」
俺は彼女に吸い寄せられるようにして、非常階段に背を向けて歩きだした。俺は無意識に手を繋ごうとしていたが、光莉は赤くなって「ここ外ですよ」と避ける。そうか、外では手を繋いだことはない。抱きしめるのも家の中だけだ。はやく家に着かないかな。
「黒いTシャツだと暑くないですか。アイスでも買って帰ります?」
笑顔でこちらを振り向く光莉にまたうなずいて、自動販売機でコーンのついた安いアイスを買った。これをシェアする気らしい。そんなん手を繋ぐよりどうなの、と思うが、俺はうれしくて先にひと口かじった。
半歩先を光莉が歩き、歩幅の大きい俺はゆっくりその後ろをついていく。光莉はたまに、振り向いて俺にアイスを向けた。
彼女の揺れるポニーテールと、俺と対極の色をしたTシャツ、にじむ汗、それを後ろからボーッと見つめる。光莉はかわいい。綺麗だ。綺麗すぎて、まぶしい。