ハッピーエンダー
光莉のアパートに戻り、カーペットに腰を下ろした。ここに来ると本当に落ち着く。母親のことを思い出すと体が震えてくるのに、この部屋の匂いはそれを和らげてくれる。
酒もタバコも香水の匂いも、生々しい匂いもしないし、俺が宿にしてきた女の家みたいに気取ったものも置いていない。光莉なりに一生懸命生きているのが伝わるものばかりに溢れていた。
「……光莉」
「わ、もう」
お茶を入れた光莉がこちらへ戻ってきて、テーブルにカップを置いた瞬間を狙って抱きついた。ベッドサイドに押し付けて、彼女の胸に顔を埋める。
「なでて」
彼女の指が、俺の髪をなで始める。最近はこうしてもらわないと落ち着かない。
光莉だけは、好き。本当はセックスもしたい。この隙のない服装に手を入れて、かき回してみたい。
俺は汚れているから絶対にそんなことはしないけど、たまに欲望で眠れなくなるときもある。その胸が苦しくなる感覚に耐えてやっと眠りに落ちる瞬間が、光莉を大切にしていると実感できてたまらなく幸せだった。