ハッピーエンダー
これからいろいろお金がいるだろうし、必要なだけ渡したい。私はこんなに使わないもの。すぐに既読になり、三分後に【いや、いらないよ】と帰ってくる。
【三百万あるの。ひとりじゃ使えないから】
驚いたかな。私がお金に困っていると思っているだろうか。そんなことはない。私はお兄ちゃんに渡すしか使い道がないのだから、じゃぶじゃぶ使えばいいのに。
【あのさ、俺は自分で貯めてるしそんな金いらない。なんかお前、大丈夫なのか? 正直怖いよ。働いた金でアパート見つけて、きちんと生活してからまた連絡してくれ。相談は乗るから】
兄の家に向けて歩きだしていたが、肌寒い空の下で足を止めた。もう心配してくれた兄はどこにもいない。本当に突き放されたのだ。水樹さんに言わせれば、これは相談に乗る気はさらさらない、ということだろう。