ハッピーエンダー
「み、水樹さ……」
「あーあ、可哀想にな、光莉。あんな狂った男どもに好き勝手にされて。忘れようぜ。光莉は綺麗なままだ。かわいいよ。俺は今の光莉も好き」
彼は愛しげに私の頬に触れ、何度もなでた。私を肯定し続ける彼の狂気に涙があふれ、首を横に振る。
「もうやめましょう。私は誰かの幸せを奪わないと生きていけないんです。不倫もそう。奥さんがいる人じゃないと。奥さんがもらうはずだった幸せを奪うと満たされるんです」
「……バカだな、光莉」
「水樹さんこそ。気づいてないんですか?」
目を細めた彼に、私はアハハと笑った。
「さっきの男性と水樹さんに違いなんてありませんよ。水樹さんにも婚約者がいるから頼ったんです。幸せを分けてもらおうと思って」
彼はそこで、ブチンと切れた。私の顎を掴み、ギリギリまで血管の浮いた顔を寄せてくる。