ハッピーエンダー

「……光莉。ちょっと黙れ」

ああ、怖い。私を軽蔑しただろうか。でも、私はなにも嘘は言っていない。この数年、気づきかけていたことは事実だと確信した。私と水樹さんの運命。

「水樹さん。お父さんが嫌いなんでしょう? 私もです。父なんて大嫌い。でもね、知ってますか? 私たちはまるで彼らそのものなんです。水樹さんにとっての私は、あなたのお父さんとお母さんの関係と同じ。籍を入れず、愛人のまま、子供を作って。正妻にはなれずポイ捨て。お母さんは寂しさを男で埋める」

「……やめろ」

「私も。父が母にしたことと同じことを、何度も何度も繰り返すんです。母みたいに裏切られた人を何人も作って。こんなおかしなことってありますか? 私たちは一緒にいたって、どこまで行っても、何年経っても、彼らにしかなれないんですよ」

「やめてくれ!!」

水樹さんは私の上から離れてベッドサイドに立つと、耳を塞ぎ、座り込んだ。
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