ハッピーエンダー
私たちはどちらも息を切らしていた。薄暗いこの部屋は息苦しい。私は重い体を起こして、ベッドの下にうずくまる水樹さんの背に触れる。
「五年前、私が水樹さんを解放したとたん、水樹さんは今の生活を手に入れた。不思議でしょう? これが最後のチャンスですよ。婚約者さんはきっといい人です。社長になって、幸せを手に入れてください」
彼は震えるだけで動かず、頭を押さえて黙っている。それでいい。
水樹さんは優しいな。ここへ来ても、私を乱暴に抱いたりはしなかった。最初から最後まで寂しさで死んでしまいそうな私を慰めてくれた。セックスなしでそんなことができるのは、水樹さんだけだ。
ほかの人と同じなわけがない。あの日、抱きしめてキスをしてくれた水樹さんが大好き。本当はそばにいてほしい。いびつでも、彼を不幸にしても、私は水樹さんがいないと生きていけない。だから私が終わりにしなきゃ。
泣きそうになり、ベッドから離れようとすると、うなだれていた彼の手が私の腕を掴んだ。
「み、水樹さん」
顔を上げた彼の瞳から、涙が一筋流れていた。