ハッピーエンダー
「すぐ出ていけってことじゃない。ただ、ごめん、彼女とのことも考えなくちゃならなくて」
食卓を挟んで、そう告げられる。謝ることじゃないのに。
「安いアパート借りて引っ越すよ。彼女さんと結婚して、このアパートで暮らしたいんでしょう?」
「うん……まあ、そうなんだけど。光莉の意見も聞きたい」
私は箸を置き、笑った。お兄ちゃんたら、いつも私のことばかり気にして、自分の幸せは二の次で。やっと出ていってくれと言ってくれて、私はとてもうれしいのに。
「ありがとう、お兄ちゃん。お母さんが死んじゃってからこの五年間、本当に助けてもらったよ。感謝してもしきれない」
「なに言ってるんだよ。家事はほとんど光莉がやってくれたろ。家賃も折半だったし」