ハッピーエンダー

「よくないだろ光莉! いいか、俺が連れてきたのが悪かったから、お前ももうコイツとは金輪際──」

水樹さんは兄の言葉を遮り、掴まれていた手首を逆転させて兄の手首を捻りあげた。私は「きゃっ」と声を上げたが、彼の狂気に満ちた目線になにも言えなくなる。

「もう遅い。アンタは俺をここに連れてきちまった。俺はそろそろ死のうかと思ってたのに、残念だったな。光莉を見たら気が変わった。アンタの妹くれよ。またふたりだけで暮らしたいんだ」

「さっき婚約者がいるって言ってたろ! うちの妹を愛人にするなんて俺は許さねえぞ!」

「……さっきから何? 結婚しろって言ってるのか? 俺が? 光莉と?」

兄はさらに怒りを募らせ「ハァッ!?」と大声を出した。
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