ハッピーエンダー

水樹さんは続ける。

「光莉を俺の父親の家族にするなんてごめんだな。悪夢だ。そんなものは別の女にやらせて、光莉は俺だけのものにする」

「……なに意味わかんねぇこと言ってるんだよ。俺は、光莉には結婚して子どもを作って、幸せな家庭を持ってほしい。それができないならほかを当たってくれ」

今度は水樹さんが「ハァ?」と眉を寄せ、大きく首をかしげる。

「なんで? 結婚しなくても子どもは作れるだろ」

「テメェッ!」

殴りかかりそうな勢いのお兄ちゃんを私は後ろから羽交い締めにして止め、「お兄ちゃん落ち着いて」となだめた。それでもなお、彼を指差し、血管が浮き出た怒りの形相を向けて「なんなんだこの男は!」と怒鳴っている。

「怒らないでお兄ちゃんっ。水樹さんのお家はそうだったから、だから……」

兄はそこまで聞いてピクリと止まり、ハァハァと息をして怒りを逃がし始める。
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