ハッピーエンダー
「兄を責めるのはやめてください! いくら水樹さんでも許しません!」
私は飲まれるまいと必死に言い返すが、兄が隣で小さく「わかった」とつぶやく。
「お兄ちゃん?」
「光莉はこの家から出さない。彼女と三人で一緒に暮らす」
「え!? やだ! そんなのどう考えたって邪魔者だよ! 出ていくってば!」
「大丈夫だ。彼女は話せばわかってくれる」
やっぱり兄が変な方向に思い詰めてしまった。彼女と三人で、なんてとんでもない。これ以上兄に迷惑をかけるなんてごめんだ。もし揉めて、兄から恋人まで奪ってしまったら、私は生きていられない。
兄の険しい表情と私の焦る様子に、水樹さんの口角は怪しく上がっていく。
「へえ。三人でねぇ」
「ほらもう出ていってくれ。光莉は兄の俺が責任持って面倒みるから」
ああ……。もういやだ。これ以上お兄ちゃんからなにも奪いたくない。ひとりが怖くて甘え続け、兄の自由を貪り続けてきた。こんなことは終わりにしたい。どこかに逃げたい。