ハッピーエンダー
「そんなやつらばかりさ。誰も最後まで一緒にいてくれる気のない嘘つきだ。もう光莉は苦しまなくていい。仕事も辞めておいで」
養われるのは嫌いなはずなのに、ここで簡単に仕事を辞める気分になった。彼に操られている自覚はある。それでも、誰かに流され心が楽な方向へ傾いていけるのは心地よかった。
兄の本心を知ってしまい、私をまともな道に引き留めておけるものはなくなった。自立心のなくなった私が欲しいのは、空っぽで孤独な私を抱きしめてくれる人だけ。
「……水樹さん」
「もうなにも心配ない。必要なものは全部ここにある」
脱け殻のようなこの部屋を指して、水樹さんはそうささやいた。必要なものは、私と、彼、お互いのみ。抱きしめ合って眠るだけ。
涙は滝のようになり、鼻の奥もグスッと音を立て始め、体の力が抜けていく。
「私、水樹さんだけでいい」
「うん。俺も」
彼の広げる腕の中に、身を任せた。