ハッピーエンダー
抱き合ったまま、ベッドで眠った。シーツもカーテンも黒で、起きたら真っ暗なまま朝になっていた。まるで地下シェルターで暮らしているみたいで、水樹さんらしい。
まだ隣で寝息を立てている彼はそのままで、私は体を起こした。腕枕をされていたせいで少し体が痛い。お互い着衣に乱れはなく、本当に抱き合って眠っただけ。久しぶりに夜ぐっすりと眠れた気がする。
枕もとに投げてあった彼のスマホを見ると、時刻はもうすぐ午前九時。朝食でも作ってあげたいところだが、冷蔵庫にはなにも入ってないだろう。
すると、そのスマホが振動し始めた。
画面には【090ー✕✕✕✕ー✕✕✕✕】と番号が表示されている。
「み、水樹さん。起きてください。電話きてますよ」
彼の肩を揺すってみる。目をこすりながら「んー?」と不機嫌に表情を歪ませている彼に、震えているスマホを持たせた。
「電話です電話。ほら」
「……ん」
彼は仰向けのまま親指でタップして音を消し、大きなあくびをする。