ハッピーエンダー

私は玄関に靴を置きに行き、また寝室へ戻りながら尋ねる。

「……さっきの方はどんな女性なんですか。こんな朝から訪ねてくるなんて、水樹さんのことよほど好きなんですね」

表情を変えずに数秒答えを考えた水樹さんは、不快感を露わにした笑顔になった。

「らしいよ。また会いたいってずっと騒いでる。二十歳のお嬢様で、世間知らずの箱入り娘。俺のこと見て『理想の人』って言ったんだぜ。笑っちまうよな」

素直な女性だ。彼女をかわいいと思えれば、水樹さんは幸せになれるんだろう。

今はどうあれ、表向きは彼女と結婚することになっている。端から見ればきっと理想の夫婦に違いない。家庭を築いたりするのかな。そっちに幸せを感じるようになって、陰でまとわりつく私が邪魔になったりしないだろうか。

水樹さんも、お兄ちゃんみたいにならない?
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