ハッピーエンダー
「光莉。大丈夫?」
「……あっ、はい」
いけない。こんなこと今考えたってどうにもできない。そのときがきたら離れるしかないんだから。
「なに考えてた?」
「……えっと、御曹司っていろいろ大変なんだなって」
曇った気持ちを出さないよう、笑顔を作った。水樹さんは私の頭に触れて、寝室の奥のクローゼットへと導く。
「とりあえず出掛けるか。光莉のものを買いに行くついでに朝飯でも食いに行こう」
彼は扉を開き、少ない服の中から私に貸せるものを探し始めた。自分は今のTシャツはそのままでボトムスだけジーンズに変えるつもりのくせに、私の着るものはずいぶん楽しそうに選んでいる。
「これ着て」
畳まれた紺のパーカーを差し出され、後ろを向いてもらって着替えた。長さが膝まであるし、袖は三回折らないと手が出てこない。しかしその姿を見て彼は「いいじゃん」とつぶやく。
服を着せられるのはいい。水樹さんに染められている感じがする。