ハッピーエンダー
「そう。ありがとう。じゃあ、次から来るのは俺に連絡ついてからにして。ここで待っていられても困るから」
「は、はい」
サッと心が冷たくなった。次が、あるんだ。私を隠して、彼女と会うのかな……。
彼女は本当に潔く「それでは失礼しました」とエントランスでお辞儀をし、背を向けて出ていった。ひらひらと小さく手を振って見送った水樹さんは、彼女が完全に見えなくなってから戻ってくる。
カウンター前に出てくると、コンシェルジュさんが私をちらちら見ていた。さっそくひとりに、バレた。私が横入りしていると。
「悪い、光莉。もう帰ったから」
「い、いえ。もういいんですか」
「なんか食い物もらった」
彼はぶらぶらと持っていた風呂敷の結びを顔の前に持ってきて、私に見せる。見たくない、そんなもの。
「食う? 光莉」