ハッピーエンダー

「セックスする気なら、私も家に入れません」

自分でも驚くくらい冷たい声だった。この人がプレイボーイだという噂が本当だったと知り、嫌悪感を抱いた。私は他人と軽率にセックスする人は大嫌いだ。父がそうだったから。

「マジで? 助かる。泊めてくれる?」

「……はい」

警察を呼ぶ気分に変わっていたが、先にそう言われては拒めない。彼は立ち上がろうと地面に手を付くが立てず、私はしかたなく肩を貸した。息が熱い。この人、熱があるんじゃないだろうか。

何度か崩れ落ちながら、背の高い彼をどうにか支え、家の鍵を開けた。彼とともに中に入ると部屋が余計に狭く感じる。

「ああ、いいね。狭くて落ち着く」

彼は失礼な感想をつぶやきながら、私のベッドを背に座り込む。そしてまた荒い息をし始めた。この様子ではまだシャワーは浴びられないだろう。翌朝自分の家に戻ってからにしてもらおうかな。彼を放置して、私は明日のお弁当を作り始めた。
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