ハッピーエンダー


アルバイトを終えて、帰路につく。今夜は水樹さんはどうしているだろう、帰り道でもそればかり考えていた。アパートに着き、ドアの並んだ一段上のコンクリートに上がったとき、私の部屋のドアの前に、誰かが座り込んでいることにやっと気づいた。

「おかえり」

「……水樹さん」

駆け寄ると彼は立ち上がった。

「俺のポケットに、招待状入れただろ」

彼が〝招待状〟と称したのは、私が昨夜、眠る彼の服にこっそり忍ばせた手紙だった。小さなメモ用紙を折っただけのそれを、私に見せつけてくる。

【どうしてもダメなときは、またここに来てもいいですよ】

そう書いた。
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