ハッピーエンダー
それから彼は一週間ここにいて、夏休みになった。
授業もなく、彼は昼間ふらりと出掛けるが、夜はここに戻ってくる。アルバイトはしていないらしい。私は彼がどこへ行っているか知っている。戻ってくる彼からは、毎回、男物と女物の香水が混じった匂いがする。これが彼の実家の匂いなのだろう。
「光莉。これ家賃」
「あ、どうも」
彼はここの家賃の半分をくれることになった。
「どうやって稼いだお金なんですか」
扇風機の前で髪を揺らしている彼に尋ねる。また自分を傷つけて手に入れているお金なら、いらない。
「母親のホストが小遣いくれる」
それは……。どうなんだろう。
「そいつ、めちゃくちゃ偽善者でさ。うちの母親が体売った金を巻き上げてるくせに、俺のことは不憫だからってたまに金くれるんだよ。……というかまあ、俺のこと、ホストに勧誘してるだけなんだろうけど」
「で、でも……」
「なに。俺が体売った金の方がいいの?」